PMDD(月経前不快気分障害)という症状を耳にしたことはありますか?
PMS(月経前症候群)の症状のうちのひとつで、生理周期によって精神の状態が悪化し、日常生活に支障をきたしてしまうことを言います。
このPMDD(月経前不快気分障害)に悩まさせている女性は少なくありません。
解決策や治療方法はあるのでしょうか? また、自身がPMDD(月経前不快気分障害)かどうかチェックする方法はあるのでしょうか?
今回の記事では、PMDD(月経前不快気分障害)について掘り下げていきます。
身に覚えがある人や、周囲に思い当たる女性がいる人は、是非チェックしてみてください。
この記事でわかること
PMDD(月経前不快気分障害)とは
まずは「PMDD(月経前不快気分障害)」とはなにかを簡単に紹介します。
PMDD(月経前不快気分障害)とは、抑うつ障害群の一種です。
2013年には、アメリカ精神医学会による「DSM-5」という診断基準において、正式な病名として認められています。
PMDD(月経前不快気分障害)の症状が出る期間は個人差がありますが、大体生理の7~10日前ごろに現れ始め、生理が始まると収まる人が多いです。
PMDDとPMSの違い
しばしばPMDD(月経前不快気分障害)とPMS(月経前症候群)を混同してしまう人がいます。
簡単に説明するのであれば、PMDD(月経前不快気分障害)はPMS(月経前症候群)の一種です。
PMS(月経前症候群)とは、生理前に決まって身体や精神に不快な症状が現れ、日常生活に支障をきたしてしまう状態を指します。
・下腹部の痛み
・乳房の痛み
・むくみ
・肌荒れ
・肩こり
・めまい
・頭痛
・腰痛 など
・イライラしやすくなる、怒りっぽくなる
・憂鬱感、絶望感
・緊張感
・情緒不安定
・注意力や集中力の低下
・睡眠過多、睡眠不足
・疲れやすさ
・趣味や日常生活への興味の低下 など
PMS(月経前症候群)の中でも、日常生活に支障をきたすような精神面での症状が大きい場合を「PMDD(月経前不快気分障害)」と言うのです。
PMDD(月経前不快気分障害)の原因
PMDD(月経前不快気分障害)が引き起こされてしまう原因は、まだ解明されていません。
「生理前に増加する女性ホルモンの一種・プロゲステロン(黄体ホルモン)の影響」「もうひとつの女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)のバランスが崩れるため」などの説が唱えられていますが、科学的な根拠は証明されていないのです。
PMDD(月経前不快気分障害)の判断基準は?
「思い当たる節はあるけど、実際にPMDD(月経前不快気分障害)かどうか判断しきれない」という女性は多いでしょう。
基本的には、症状の改善や治療のためにも、病院で専門の医師の診断を受けるのがおすすめです。
ただし、自分でおよその目安をつけておくことは可能です。
PMDD(月経前不快気分障害)の症状は個人差が大きいですが、前述したアメリカ精神医学会による「DSM-5」の診断基準は以下のようになっているので、まずはチェックしてみてください。
2.上記の症状は、月経が始まってから数日以内に回復し始め、月経が終わるころには消失・最小限になっている
・感情が不安定になる(突然悲しくなる、泣き出す、拒絶意識が強くなるなど)
・イライラする、怒りっぽくなる、対人関係の摩擦が増える
・抑うつ気分、絶望感、自己否定思考
・不安、緊張
・趣味や日常活動への興味が減る
・集中力の低下
・疲れやすい、だるい、気力がなくなる
・食欲がなくなる、過食になる、特定の食べ物ばかり食べたくなる
・不眠、過眠
・自らの制御ができなくなる感覚
・身体症状(乳房の痛みや腫張感、関節痛、筋肉痛、体重の増加など)
PMDD(月経前不快気分障害)の治療方法
PMDD(月経前不快気分障害)に悩んでいる女性は、それぞれの症状に適した治療をおこなっていきましょう。
まずは婦人科に行って症状を診断してもらい、用途に合わせた薬を処方してもらうのが一般的です。
ここではPMDD(月経前不快気分障害)の具体的な薬物療法について紹介しましょう。
ホルモン療法
前述したように、PMDD(月経前不快気分障害)には2種類の女性ホルモンが深く関係していると考えられています。
そのため、PMDD(月経前不快気分障害)の治療方法として、エストロゲンとプロゲステロンの合剤である「低用量ピル」を使用して、ホルモン分泌のバランスを調整するのです。
低用量ピルを服用すると、排卵機能を抑える働きによって女性ホルモンの量が安定しやすくなり、症状緩和が期待できます。
低用量ピルは、生理前の身体的な症状も緩和しやすくなると言う声が多いです。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
PMDD(月経前不快気分障害)によって精神に著しい悪影響が出ている場合、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という薬が効果的と考えられています。
これは軽い抗うつ剤の一種で、脳のセロトニン量を増やす働きが期待できます。
「ジェイゾロフト」「パキシル」「デプロメールルボックス」「レクサプロ」などが有名です。
婦人科を受診したあと、精神科や心療内科を紹介されて、これらの薬を処方してもらうケースもあります。
漢方薬
漢方治療自体には、科学的根拠はありません。
ただし、人間の生体バランスそのものに作用する働きが強いと考えられているため、婦人科等で処方される機会は多くなっています。
「漢方医学」では、体内のバランスは「気(キ)」「血(ケツ)」「水(スイ)」がきちんと循環することで保たれていると考えられています。
PMDD(月経前不快気分障害)はこのバランスが崩れている状態なので、症状に合わせた漢方薬の使用を勧められるでしょう。
代表的な漢方薬としては「補中益気湯」「加味逍遙散料」「半夏厚朴湯」「抑肝散加陳皮半夏」などが挙げられます。
日常生活からPMDD(月経前不快気分障害)を解決する方法
PMDD(月経前不快気分障害)をケアするためには、薬を用いた治療だけではなく、日々の生活習慣を整えるのもおすすめです。
具体的な解決策を紹介していきます。
栄養バランスを整える
ホルモンバランスを整え、心身ともに健康を保つためには、摂取する栄養バランスは非常に重要です。
PMDD(月経前不快気分障害)対策としては、これから紹介する栄養素を積極的に取り入れていくべきでしょう。
日々の食事でカバーしきれない分は、適宜サプリメントでサポートするのもおすすめです。
・オメガ3脂肪酸(DHA、EPA、a‐リノレン酸)
・ビタミンB6(豆、青魚、レバー、豚肉、ニンニク、玄米など)
・ビタミンD(きのこ、青魚、卵など)
・マグネシウム(海藻類、ナッツ類、大豆製品など)
・カルシウム(小松菜、小魚、牛乳、チーズなど)
また、以下は控えた方がいいでしょう。
・砂糖
・塩
嗜好品に注意する
PMDD(月経前不快気分障害)対策としては、以下の嗜好品の摂取は控えた方がいいとされています。
・カフェイン
・煙草
血流や血糖値、ホルモンの分泌バランスなどを健康的に保つためです。
ストレス解消にどうしても欠かせないという人は、病院で医師に相談してみましょう。
適度な運動をする
PMDD(月経前不快気分障害)対策には、適度な運動は非常に有効と考えられています。
全身の血流を促進することで、心身ともにリフレッシュしやすいためです。
代謝アップも見込めるため、免疫力アップも狙えるでしょう。
運動があまり得意ではない人は、ウォーキングや簡単なストレッチなどでも構いません。
ヨガやピラティスは、無理なく全身を動かすことができるのでおすすめです。
まとめ~生理前に鬱っぽくなるならPMDDを疑って~
今回の記事では、女性のPMDD(月経前不快気分障害)について詳しく解説しました。
PMDD(月経前不快気分障害)は抑うつ障害群に含まれています。
月経前に現れる精神的な症状で、日常生活に支障をきたしてしまうレベルに及ぶことも。
PMDD(月経前不快気分障害)には、低用量ピルやSSRI、漢方薬などを用いた治療が可能です。
また、日々の食生活や運動などによって対策も可能とされています。
生理前の辛い精神トラブルに悩まされているあなたは、もしかするとPMDD(月経前不快気分障害)かもしれません。
一人で苦しまずに、まずは病院で医師の診断を受けるところから始めてみましょう。
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